目の充血、目ヤニ、異物感がそれぞれ強く、耳前のリンパ節の腫れや圧痛があれば、アデノウイルス感染による結膜炎が疑われます。
アデノウイルス結膜炎は、7日ほどの潜伏期を経て発症し、我が国では8月に最も流行します。
アデノウイルス結膜炎には目だけに起こるタイプ(流行性角結膜炎:はやり目)と目以外の咽頭炎や発熱などを伴うタイプ(咽頭結膜熱:プール熱)があります。
一般に流行性角結膜炎は目の症状が強く、発症して1週間目に最も重症化し、黒目(角膜)に炎症が起こったり、瞼の裏側に白い膜が張ったりします。
この白い膜は瞼の裏側に強いはん痕を残すため、除去しなければなりません。
結膜炎が治った後でも角膜にポツポツした斑状の混濁(写真)が残ることが時々にあり、視力低下や眩しさを自覚します。
咽頭結膜熱は流行性角結膜炎より目の症状は軽く、1週間程で治ることが多く、夏風邪として小児期に多くの人が感染しています。
アデノウイルスは電車の吊り革やドアノブなどに付着しても10日以上も感染力を持つほど非常に強いウイルスです。
目ヤニや涙に存在するウイルスが手指などを介して感染するので、目を触らないこと、良く手を洗うこと、タオルを共有しないこと、お風呂は最後に入るようにしてください。
コンタクトレンズの装用は禁忌です。
咽頭結膜熱では咳やくしゃみなどからも感染することがあり、便や尿にもウイルスが存在するため、治った後も1か月はプールに入れません。
アデノウイルスを検出する方法として当院には、15分で抗原量の少ない発症早期からも検出可能なクイックチェイサーImmuno Reader®(写真)と、5分で判定できる簡易診断キットがあります。
ただしアデノウイルス結膜炎やクラミジア結膜炎なら以下に説明する点眼治療を行っても目の症状はあまり良くなりませんが、アレルギー性結膜炎や細菌性結膜炎なら治療に良く反応します。
さらにアレルギー性結膜炎では痒み感を伴い、目ヤニはわずかであることが多いです。症状が軽快するまでの期間はアデノウイルス結膜炎か他の結膜炎か判らないので、アデノウイルス結膜炎として扱い、他の人への感染予防に努めてください。
クラミジア結膜炎は治療を行ってもアデノウイルス結膜炎より治りが遅く、一カ月以上かかります。
今のところアデノウイルスに効く抗ウイルス薬は無く、主に処方される点眼薬は二次的な細菌感染を防ぐ抗菌剤と過剰な炎症反応を抑える抗炎症剤です。
原因治療でなく対症療法であり、過剰に点眼するとウイルスを増殖させたり耐性菌を発生させたりするなどの逆効果になります。
保育園や学校へ登園・登校できる目安ですが、目ヤニや充血がなくなってからであり、感染力がなくなる1週間から10日目になることが多いです。
接客業や飲食業に携わる仕事の場合、他に感染させる可能性が高く、できる限り休業してください。
アデノウイルス結膜炎は一度かかったからといって二度とかからないとは限りません。アデノウイルスには亜型があり、アデノウイルス結膜炎の既往があっても、別の亜型のアデノウイルスには感染します。
ただし感染しても軽症のことが経験上多いようです。